ようやく映像として
横浜FCの試合が見れました。「高木琢也」「プレミア志向」「12試合3失点」等々、想像を膨らませるだけだったキーワードの正体が
少し見えた気がします。
この試合(横浜FCvsヴェルディ)を見て、久々にサッカーに感動しましたよ。99年のバレンシアのカウンターとかデルネーリのキエーヴォとかモウリーニョのポルトとかを見た時と同じタイプの感動です。チームのコンセプトが完璧に1つになっている。
高木琢也恐るべきです。
キーワードを一つ一つ見ていきます。
「プレミア志向」とは高木就任以来よく聞く言葉でした。確かにそういう動きが多かったですね。CHが斜めに抜けていって、サイドに開いたFWが前にパスを出す、なんてシーンです。
全体的に言えば、今流行のオフ・ザ・ボールとオン・ザ・ボールの議論でいうところの
オン・ザ・ボールの動きが目立っていました。素早いドリブルの運びが出来るメンバーが多い(
アウグストとかチョン・ヨンデとか)のがその背景にはあるんでしょうが、みんな積極的にスペースに向けてドリブルしていくんですよね。かわすドリブルじゃなくて
スペースへのドリブルです。
攻撃時にはポジションを考えずにスペースへドリブルで運び、ワンツーで抜け出す、その繰り返しによる確かに「プレミア志向」のサッカー。非常に
能動的で攻撃的です。しかし、攻撃的なんだけどこのチームに得点が少ない要因というのはおそらく守備の問題から来てます。
「12試合3失点」(この試合後には「13試合3失点」)を支えているのは見事な
DFの網の構築です。湯浅さんのホームページによれば高木監督曰く
「守備のブロック」という考えです。
チェルシーの作るDFの網は有名です。
9人(後ろの4人+中の3人+サイドの2人)のポジションの間にたくさんの3角形を作り、その3角形の中に入ってきた相手選手をつぶしていくというもので、この3角形こそが「守備のブロック」の一つの断片です。
そのDFの網を横浜FCは
10人で作ります。そして真ん中の怖いエリアは4角形にしてより強固にしている。相手がボールを持つと、守りが1人パッと目の前に来て止まり腰を落とす。そして相手が躊躇した瞬間に、ブロックを構成する他の選手がつぶしに加勢する。
この加勢に
2トップのカズと城も加わっているというのがポイント。この2人のチェイスが横浜FCの守りの1要素なんです。(これがイザイアスが出れてない理由なんでしょうか。)
チェルシーではドログバだけは前に残っているわけで、ここが横浜FCがそれほど点がとれない理由なんじゃないでしょうか。
なんで守りに10人かけなきゃいけないかというと
、そうしないと守れないチームだから、なんじゃないでしょうか。実際、ヴェルディのバジーリオの個人技で何度も突破されて決定機を作られていますし、このDFの網は個人技には対応できない(これはチェルシーでもいっしょですが)というのが弱点です。ブロック間の受け渡しが個人技による突破で徐々にほつれてきて、最後には破綻してしまうんですね。この試合を見た限りではこの失点の異常なまでの少なさは
GKの菅野によるところが大きいのではと思います。もちろんDFの網の機能性に加えてですが。
最後に
「高木琢也」について。就任当初に「大体イメージは出来ている」とか言っていたと思うんですが、最初からこのサッカーのイメージがあったとしたら、凄い人です。早くも「次」のステージがどこなのか考えてしまうほどです。
他の監督だったらもっと
アウグストに頼ってしまうところを全体のコンセプトの中に組み込んでしまっている。そして機能させてしまっている。
ひょっとしたら、このサッカーが日本人選手全体としてのストロングポイントである
アジリティ(機敏性)と、ストライカーが生まれづらい風土という諸性質にマッチしたサッカーなんじゃないか、と。それをイメージの中で作り上げていた(かもしれない)高木琢也に感動しました。